J.COSSとは
J.COSS日本語理解テストとは、英語版受容的文法理解テスト(TROG: Test for Reception of Grammar, Bishop, 1989)とそのフランス語版(L'E.CO.S.SE, Lecocq, 1996)をもとに作成した日本女子大学式日本語版統語と意味の理解テスト(J.COSS: JWU, Japanese Test for Comprehension of Syntax & Semantics)です。
このテストは、日本語における幼児期から高齢期にかけての文法理解の発達水準を評価することや、言語発達遅滞や失語・失読症などの障害領域を特定するために開発しました。
対象者
原著である英語版文法理解テストは、原著TROGよりも対象年齢範囲を拡大し、3歳以上の子どもから、65歳以上の高齢者にも実施可能なテストとなりました。また、聴覚版と視覚版を設定しておりますので、口頭言語理解に問題のある方にも実施可能なテストとなっています。
これまでに全国の保育園・幼稚園・学童保育・小学校・高齢者福祉施設のご協力により、J.COSSは3000名以上の被検者を対象にテストの標準化を行いました。その結果、ガットマン尺度(Guttman Scale)の再現性係数が0.869(まず信頼できる水準)となり、信頼性の高いテストであることが示唆されました。この調査結果にもとづき、幼児期から児童期、ならびに高齢期における日本語文法理解の生涯発達段階が示されています。
現在、この文法理解の生涯発達段階をもとに、発達障害児の言語発達水準の評価と障害領域の特定を行うとともに、自閉スペクトラム症や特異的学習症などの発達障害者のコミュニケーション障害に対する教育支援を行っています。これらの調査支援はさまざまな発達障害児療育施設や高齢者施設などより高い評価を受けています。
J.COSS日本語理解テストの構成
J.COSS第三版は第一部と第二部の二部から構成されています。
1.第一部:語彙チェック<幼児・園児対象>
第二部で使用する語彙を理解しているかどうかを確認するものです。
Ⅰ~Ⅳページ―名詞、Ⅴページ―動詞、Ⅵページ―形容詞の7ページです。
絵で描かれた語彙について被検児が命名もしくは指差しで解答を行うものです。
2.第二部:文の理解テスト<幼児・園児・児童・成人・高齢者など対象>
文法20項目の理解を評価するものです。
各項目に問題が4問ずつ設定された20項目80問題から構成されています。
各問題には4種類の解答選択肢を準備しました。
検査者が読んだ問題に一致する絵を1つだけ選択する方法で解答を行います。
20項目の内容は以下の通りです。
1:名詞、2:形容詞、
3:動詞、4:2要素結合文、
5:否定文、6:3要素結合文、
7:置換可能文、8:XだけでなくYも、
9:XだがYはちがう、10:多要素結合文、
11:XもYもちがう、12:位置詞、
13:主部修飾(左分枝型)、14:受動文、
15:比較表現、16:数詞、
17:述部修飾、18:複数形、
19:格助詞、20:主部修飾(中央埋込型)
3.第二部は聴覚版(問題を聴覚的で提示するもの)と視覚版(問題を視覚的に提示するもの)があります。
J.COSSの実施方法
1.第一部<語彙チェック>の手続き
語彙チェックとは第二部の文理解テストで使用される語彙が理解できるかどうか確認するためのもので、就学前の幼児を対象に実施して下さい。
被験者が図版に描かれた絵の名前を順に命名(naming)して回答を求めます。
ただし、恥ずかしがりやや発話が困難な被験者には、検査者が問題の単語名を読み、被検者が該当する絵を指差し(pointing)して回答を求めます。
2.第二部<文の理解テスト>の手続き
第二部は日本語の20項目の文法が理解できるかどうか確認するもので、全被験者を対象に項目A~項目Tまでの20項目80問題を実施して下さい。
検査者は各問題文を1問ずつ読み、被検者が問題文にあう絵を指差して回答を求めます。
*被験者の回答に対して、検査者は正誤をフィードバックしないで下さい。
*詳しくはマニュアルをご確認ください。